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古着の行方:あなたの出す古着が地球を汚さないように

2022年の年初から発展途上国などで大量の古着が投棄されているというニュースが報道されていました。NHKではチリのアタカマ砂漠に古着がうずたかく積まれている映像が流れていました(2月6日「ニュース地球まるわかり」)。これらの古着のほとんどは、実は先進国から輸入されたものです。どうしてこういうことが起きるのでしょう。

我々が小売店やNGOなどに持ち込む古着は、一部が国内の古着市場に供給されますが、その多くは他国に輸出されます。それは、多くの発展途上国では古着は必需品として需要があるからです。比較的品質が良くて安価な古着は、主に普段着として購入されます。つまり、私たちがしばしば無料で持ち込む古着が、海の向こうでは値段がついて売買されています。日本から途上国までの輸送費用や人件費が必要なので、無料の古着に値段がつくのはおかしなことではありません。

途上国の消費者にとっては安く服が買えることは大きなメリットです。デザインが古いので晴れ着としては好まれませんが、普段着としては十分です。また、衣服のライフサイクルが延びることで、衣料品の生産量と廃棄量も減る可能性があります。サステイナビリティという点からも、古着の流通はよいことだと考えられます。

しかし、現在の流通システムでは、チリで見られたような不法投棄は世界各地で発生しているでしょう。それは、二つの要因が関連しています。一つは、発展途上国では産業廃棄物の処理のルールが守られないことが多いという事実です。ルールはありますが、行政による監視が行き届かない傾向があり、古着の輸出はそのような国の廃棄物を増やす可能性があります。そして、古着特有の問題として、輸出先で需要のない衣服まで輸出されているということが指摘できます。輸入された古着の一部は流通することなく廃棄されています。輸出元(日本など先進国)で古着の十分な仕分けが行われていないため、デザインも含めて品質が良くないもの、気候や文化に合わない服も混ざったまま大きな袋に入れられて運ばれていくためです(※細かく仕分けをしている回収団体もあります)。

下の図は、少し古いですが2010年の貿易統計にもとに一人あたりの古着輸入量(年間)を示したものです。多い国では年間4㎏を超える量を輸入しており、チリも輸入が多い国の一つです。こうした国では、市場で売れない古着の量も相当多くなるでしょう。

輸入量地図(図5).PNG

現地に到着する古着に当たりはずれがあることは、現地での調査に基づく研究で指摘されています(例えば、小川 2011年)。仕分けの手間を省く理由について詳細は分かりませんが、おそらく、輸出側は仕分けのための高い人件費を削減したいと考え、他方で、輸入国で余った古着はコストなしで処分できるので、売れない古着も引き取られます。結果的に、不法投棄ができる国に廃棄物を輸出していることになっているようにみえます。そうだとすると、先進国の消費者が古着を出すときに仕分けをすることで、無駄な古着を減らせないでしょうか。

私たちは服を買う時にかなり時間をかけて商品を選んでいますが、それは途上国の消費者も同じです。アフリカにはおしゃれな人が多いので、なんでも売れるわけではありません。どのような服が好まれるのか分かりづらいのも事実ですが、回収団体によっては、受け付けられる古着の特徴を示しているところもあります。海の向こうで、誰かがあなたの出した古着を手に取って買うか買うまいか考えを巡らせる、そんな光景を想像してみるとどうでしょう。

【関連する論文、書籍】
小川さやか『都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』世界思想社 2011年。
福西隆弘「リユース品貿易の実態:古着の国際貿易を事例に」小島道一編『国際リユースと発展途上国:越境する中古品取引』研究双書 No.613 アジア経済研究所 2014年 所収。
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